カメラのアングルによって、空間から感じられるものが全く違ってきたりするが、どんなにすばらしいシーンでも繰り返し見ていると飽きてしまうように、ロケーション場所においても常に新しさが求められる。だが釜山という限られた土地で、これまで数百本以上の撮影が行われており、だんだん新しい場所を発掘するのが難しくなってきている。そのため、釜山フィルムコミッションでは、常に個性溢れる新しいロケーションを求める映画人の要望に応えようと、毎年新しいロケーションの発掘に全力を尽くしている。そのうち、映画の中ですばらしい空間を演出してくれる7つのベストロケーションを厳選した。
これから取り上げる場所の中には、既に一、二度映画に登場した場所もあるが、その程度の露出はどれも十分帳消しにできるほどの魅力を持っている。また、これまでひた隠しにされて一度も公開されなかった秘密のロケーションもある。どの場所もその空間ならではの特色を持っており、他のチームが目をつける前に先取りした方がいいかもしれない。
では、釜山フィルムコミッションがお薦めする7つのスペシャルロケーションを紹介しよう。
「プサンは港湾都市 釜山新港」
釜山で最も撮影頻度の高い場所の一つが釜山コンテナ埠頭だ。港湾都市であるため、都市の随所に埠頭があるのも理由の一つだが、港湾公社や各関連機関の協力を得やすく、他の地域では難しいとされるシーンでも、無理なく撮影できるというのが大きなポイントだ。最近北港の再開発が進められ、コンテナの物量のほとんどが釜山新港へ移転された。近年多くの映画に登場しているのは甘泉(カムチョン)港埠頭だが、釜山新港で撮影された映画はまだないため、映画チームにとっては希少価値の高い地域だ。また、規模も釜山の他の埠頭よりずっと大きいため、様々なシーンの演出が可能な地域といえる。
「韓国最高の夜景 海雲台マリンシティ」
海雲台は、超高層ビルが次々と建ちあがり、毎日のように釜山の地図を塗り替えている場所。その中でもこのマリンシティは、現在釜山最高のデートスポットかつ名所として脚光を浴びている。釜山のランドマークである広安(クァンアン)大橋の華やかなライトアップが目の前に広がり、高級レストランやカフェが海岸に密集している。洗練された雰囲気を演出するならここに限る。
どこでもカメラを当てるだけで、すばらしい景色を演出することができるが、海の向こうの防波堤から眺める夜景は、韓国一と太鼓判を押せる。既に数本の映画のアングルに収められてはいるものの、依然として最高のロケーションの一つと呼ぶのにふさわしい場所だ。
「ハードボイルド・アクション・スリラー・ホラー 西面(ソミョン)中央市場」
見た目は平凡すぎて特に興味を持たずに通り過ぎた場所であっても、一旦中に入ってみると、予想外の発見をすることがある。西面中央市場が立っているビルも、周りでよく見かける一般的なビルの一つだが、予想を裏切るユニークな空間が満載だ。一階はベアリングや一般の工具を販売する商業ビルで、両側にはぎっしりと工具が並んでおり、各階ごとに雰囲気ががらりと変わる。古い建物特有の不気味な雰囲気が漂い、階段の下にどんな空間が広がっているか、少々怖くさえ感じる。現に地下の駐車場や連結通路、廊下、屋上など、平凡な空間はほとんど見当たらない。ハードボイルドなB級映画にふさわしい空間がぎっしり詰まったロケーションだ。
「人間臭さでいっぱい チャガルチ・コムジャンオ通り」
チャガルチ市場は、ここ数年様々な開発が進められ、昔の趣はずい分消えてしまった。映画屋にとって、昔の情景がだんだん薄れていくことは残念だが、これが歳月の流れだから仕方ないと思うしかない。だが、新しく建てられた建物を除けば、いまだにチャガルチ市場ならではの活気溢れるにぎやかな情緒はそのまま残っている。とりわけ露店通りの先にあるコムジャンオ店は、昔のままに人間臭さを漂わせている。
たった二人の客でいっぱいになるほどの手狭な店が、まるで列車のように数十軒も続いている。味つけされたおいしそうなコムジャンオ(ヌタウナギ)が火の上でジュウジュウと焼かれ、庶民が焼酎を飲みながら、喜怒哀楽の入り混じる世間話に花を咲かせるチャガルチ・コムジャンオ通り。これぞ釜山らしいロケーションである。
「原型をそのままに留める 日本家屋」
釜山にはいまだに多くの日本家屋が所々に残っている。昔、日本人が多く住んでいた旧都心の中区や東区一帯には和風の建物がたくさん残っているが、歳月とともにほとんど形を失ったものや、老朽化してとっくに撤去されたケースがほとんどだ。釜山市庁の近隣にも昔の日本人の官舎として使われた住宅街があるが、今は多くが近代的なビルになっており、その原型を残すところはほとんど存在しない。
だが写真にある空間は、昔の日本家屋の原型をそのまま留めているため、若干のセッティングさえ加えれば撮影空間として充分活用できる場所だ。庭の手入れも行き届いており、規模もかなり大きい。ただし、個人所有の住宅であるため、撮影のためには交渉が必要だが、映画作品の空間として活用できるなら、それだけの手間をかけても惜しくないだろう。ここは、特定の映画にのみ活用可能な空間ではあるが、そのぶん希少価値があるため、お薦めしたい場所だ。
「迷路のように入り組んだ 鶴章川(ハクジャンチョン)」
川の両岸に沿って家が立ち並んだ結果、現在のような形の町が形成された。川がかなり長いため、途中に両岸の町をつなぐ小さな橋がかなり多く見受けられる。また、川の幅が一定ではないため、橋の形や構造も少しずつ異なる。
川に沿って歩いていくと、途中で行き止まりになっていて、迂回したり来た道を戻らなければならない場合もあれば、路地同士で通じている場所もあったりと、ずい分複雑な構造になっている。そのため、なんだか迷路のようにも感じる、非常に独特な雰囲気を醸し出す地域である。
「神秘の島 真友島(ジヌド)」
釜山フィルムコミッションのどの資料にも一度も公開されたことのない機密ロケーションの一つ。ハリウッド作品と協議していた場所だったため、一般には公開されていなかったが、この場を借りて初めて公開する。
真友島は、洛東江(ナクトンガン)から流れてきた砂が堆積してできた島だ。釜山の江西区から小船で3分あれば行ける無人島で、海岸には足がずぶずぶと埋まっていくほどのきめ細かい砂浜が4km近く続き、北側には干潟も広がる。
また、島の中央には松林があり、広々とした草地と植物群落が松林と見事な調和をなしている。釜山の人でさえこの島の存在をほとんど知らないため、島全体がほとんど手付かずのまま、自然の姿で残っている。
とりわけ目を引くのは、島の内部に昔建てられた建物が一軒残っていること。そこは私有地で、地元の人の話では昔、児童養護施設として使われた建物だそうだが、島の中からも建物が見えないほど人目を避けるように建てられており、痛ましい過去を秘めたまま、現在は老朽化して空き家となっている。真友島は、今も洛東江から流れてきた砂が堆積し、少しずつその面積を広げている。
出所 「BFC Report 釜山フィルムコミッション ニュースレター vol.36」
文 イ・ジョンピョ、釜山フィルムコミッション海外事業チーム長